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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)328号 決定

一、本件記録を調査すると、本件不動産競売手続の基本たる根抵当権の設定登記後である昭和三一年九月二九日、当時の本件競売目的物件所有者であつた抗告人の前主遠藤波子と債権者中南信用金庫との間に締結された停止条件附賃貸借契約に基き昭和三一年一〇月一二日付で本件競売目的物件全部につき債権者中南信用金庫を権利者とする、民法第六〇二条所定の期間内である期間三年の賃借権設定請求権保全仮登記がなされているのに本件競売期日の公告には何れもこれを掲記しなかつたことが認められるけれども、右賃貸借契約の停止条件が成就した事実を認むべき資料がないから右賃借権は未だ発生していないものとみる外はなく、また右停止条件附賃借権については仮登記があるにすぎず、右仮登記に基き本登記がなされたとか、或いは借家法に定める引渡により、賃借権の対抗力を取得したという事実を認めるべき何等の資料もないから、前記仮登記のみによつては抵当権者並びに競落人に対抗することができないといわねばならず、かゝる仮登記あるにすぎない停止条件附賃貸借は競売法第二九条により準用される民事訴訟法第六五八条第三号によつて競売期日の公告に具備することを要する賃貸借に該当しないから、本件競売期日の公告に前記停止条件附賃貸借が掲記されなかつたとしても何等違法ではない。

二、次に不当廉価の理由(二)について考えると、本件記録によれば、鑑定人杉山宏に対して評価命令がなされたのは昭和三五年七月二九日であつて、同鑑定人の評価書が原審に提出されたのは昭和三十五年十二月二十四日であり(抗告人は、右鑑定人の鑑定は昭和三四年度の評価にかかるというが、かく認めるべき資料はない。)、右評価に基き最低競売価額が定められ昭和三十六年二月二十五日午前十時を以て第一回競売期日と指定されたが、その後右競売期日は十回に亘り変更された結果昭和三十七年六月二日午前十時に第一回競売期日が開催され最高価競買人が定つたことが認められる。従つて、本件競売目的物件が評価されてから第一回競売期日迄の間約一年五月を経過したのであるが、競売手続は、その性質上、評価から競売期日の実施まで、ある程度の日時のかゝることは免れないところであるから、日時の経過により、従前の評価額が明かに失当なものに帰したと認めるべき特段の事情がない限り、前記程度の日時の経過した場合において再評価を命ずることなく従前の評価額を最低競売価額として競売手続を実施したからといつて、これを違法とはいい得ない。

(鈴木禎 花淵 山田)

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